トキドキ☆パイレーツ ~海賊の雑記帳~

☆VPRO海賊団のメンバー☆ヨッチャンのブログ☆

☆海賊ヨッチャン物語 その9☆

 

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「 砂漠の隠者 」

 

少年が一人、荒野の中を黙々と歩いていた。

 

そして

 

その様子を獲物を仕留める猛禽類のような鋭い瞳でじっと見つめる男がいた。

 

巨大な船の舳先のようにそびえ立つ

 

高い崖の上に男はいた。

 

赤黒い双眼鏡を持つ手は微動だにしない。

 

細い枯れ枝のような痩身の体で

 

背筋をぴんと伸ばし

 

地べたにあぐらをかいていた。

 

傍らには、かなり使い込み色褪せた

 

大きな黒いリュックが無造作に置いてあり

 

リュックの上部には格子柄模様の丸めた毛布が

縛り付けてあった。

 

白い煙草をくわえ、時折口元からでる煙

 

は、

 

のろしを上げた後の燃え残りのような印象も与える。

 

背筋を伸ばし直しながら

 

くわえていた煙草の先を親指と人差し指の先で 

 

ひょいと、つまみ、

 

眼下の砂漠に向けて、火の粉を帯びた灰をまき散らした。

 

肺深く吸い込んでいた煙を

 

まるで口笛を吹くかのように空を仰ぎ、細くゆっくりと吐き出した。

 

生まれた薄白い煙は、崖の下から吹き上げる風にまたたくまに消えて

 

空は薄汚れることなく元通りになった。

 

男は、覗き込んだ双眼鏡を覗き込みながらちっと、舌打ちをした。

 

「、、、また村に捨てられちまったか、、、」

 

(まったく時代錯誤してやがる)

 

男は、首に垂らした、錆びた土埃だらけの大きなゴーグルを

 

両手で顔にあて、キュッと調節ベルトを絞ると

 

やれやれといった感じで

 

めんどくさそうに前かがみになると

 

、たくさんのひも状の飾りが巻きつく

 

ズボンとともに腰をゆっくりと上げた。

 

左の腰の銀に光る短刀を収めた鞘が

 

それに合わせて揺れる。

 

男は、片手で、ひょいとリュックを

 

肩に担ぎ、リュックに両腕を通し終わらないうちに

 

かがむような態勢で、素早く走り出した。

 

それまでのおっくうな立ち上がり方、しぐさとは、

 

反対に岩だらけの道なき下り坂を機敏に走り始めた。

 

崖の上から、少年が歩いている道までは

 

 

2キロほどは、あったが、

 

男はかもしかのように右へ左へと自在に動いた。

 

時に

 

岩と岩をまたいで飛びながら

 

坂を下り

 

時に

 

木の枝を使ってしなやかに

 

軽やかに

 

坂を下った。

 

土埃を上げずに坂を下って行く様は

 

大きなリュックが

 

崖から、ひらひらと舞い降りていく様でもあった。

 

 

男は、風のように少年の背後に迫り

 

少年を追い抜くと振り返りざまに、腰の短刀を抜き少年の喉元寸前に

 

刃を向けた。

 

 

「やあ、この世で一番、

 

あわれな少年よ、

 

お前は

 

これからどうせ死ぬ運命だ。

 

お前の持っている食料、飲み物

 

を俺様に全部よこしやがれ。」

 

 

少年は、男にいきなり、何のことをを言われたのか

 

そして、この広大な荒れた土地に人がいたことに

 

一瞬のなつかしさととてつもない恐怖が

 

入り混じって

 

自分に今起きていることに

 

すぐ理解ができなかった。

 

ただただ

 

鋭い刃先が自分の首もと寸前にあることに

 

息をのむことしかできなかった。

 

目の前にいる男が夢にさえ思えた。

 

 

男は、にやけ顔で

 

さらに

 

少年へと迫った。

 

「さあ、すべてを俺様に捧げろ!!」

 

男は、口元を緩ませ薄汚い歯を見せながら、臭い息を吐き

 

にやけ続けた。

 

おびえる少年の目に

 

男は絶対の勝利を確信したのだが

 

少年が首に下げている赤い守り袋が

 

かすかに熱を帯び

 

赤く光を放ち出したことに

 

男はまったく気づいていなかった。