トキドキ☆パイレーツ ~海賊の雑記帳~

☆VPRO海賊団のメンバー☆ヨッチャンのブログ☆

☆海賊ヨッチャン物語 その5☆

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聖なるパイプの煙



シェイクマリーンの町外れのラビアーナ地区。

 

この地区の村では

 

15の歳になると村の掟により

 

たった一人で

 

人が住むことがない

 

砂漠や岩山しかない荒涼な西の土地へ行き、

 

大精霊の声を聴くまで、村には帰れない旅をしなければならない。

 

今宵は

 

この村の森で捨てられ、そして拾われた

 

15になったばかりのヨーテの旅立ちの物語。

 

村の長、

 

そしてヨーテの育ての親

 

老人チャンパーは言った

 

「ヨーテよ、おまえが、旅に出る前に

 

ひとつだけ話をしておくことがある。

 

大精霊さまのお声を聞ける旅にでられる者は

 

この村のご先祖さまがたの血を継ぐ者しか

 

資格はないものであった。

 

本来ならば

 

私が森で拾い受けた

 

お前に、この旅の資格はない。

 

だが

 

村の長として

 

そして

 

この集落の

 

大精霊さまの伝え人として

 

お前は、この村の森の精霊の子であると心から信じておる。

 

かつて、大精霊さまの掟を守ることが出来ない者がいて、村はこのように

 

さびれてしまった。

 

しかし、自然というものは

 

永遠に生と死を繰り返し

 

たとえ

 

命が尽きるとも

 

また

 

別のかたち、別の魂で生まれ変わるものなのじゃ。

 

たとえ、この村に一人も人間がいなくなっても

 

大自然は、決してなくならぬ、そして精霊さまもなくならぬ。

 

この世の命は

 

永遠に連鎖するものじゃ。

 

おまえが、大精霊さまに

 

会えると必ず信じておる。

 

ゆけ!!

 

ヨーテよ!!

 

そして

 

大精霊さまに出会い

 

お前の生まれた意味、

 

そしてこれからの使命を授かるのじゃ!!」

 

ヨーテが旅立つ前の晩は、村で

 

厳かな儀式がとり行われた。

 

儀式には聖なる煙を使い

 

大精霊さまに

 

これから旅立つ者のことを教え

 

旅の安全を祈願する。

 

儀式が終わると

 

村人たち全員で

 

旅立つ者と

 

杯を交わし

 

日頃からの感謝を一人一人に伝え、

 

大精霊さまに会えるよう

 

村人たちから祈りを受ける。

 

 

 

ヨーテには、同い年の幼馴染がいた

 

名前をルビア

 

村の森で代々木こりをしている家の娘で

 

サルビアが咲き誇る季節に生まれ、こう名付けられた。

 

ヨーテとルビアは

 

湖で泳いで遊んだり

 

森の中で

 

かくれんぼをして遊んだりして活発に遊んだ。

 

子供が少ない村で、

 

二人はまるで兄妹のように、ときには

 

想いあう恋人のようにして共に育っていった。

 

ルビアは絵がとても上手だった。

 

ルビアが描く花の絵は、まるでそよ風の音や

 

飛び交う虫たちの声まで聞こえて

 

きそうなくらい、心安らぐ美しい絵だった。

 

ヨーテと同い年のルビアもヨーテの旅立ちの後に

 

西の土地への旅立つことも決まっていた。

 

先に旅立つヨーテに

 

絵を描いて

 

お守りにしてヨーテに

 

プレゼントしようと

 

ルビアは考えた。

 

 

この村には、絵についての厳しい掟があった。

 

 

決して自分の絵を描いてはいけない。

 

という掟。

 

 

絵を描いたその者の魂が、描いた絵に宿り、永遠にそこで彷徨うという

 

古来からのいい伝えがあったからだ。

 

ルビアは

 

ヨーテが旅立つとき

 

花を絞って紅色に染めた

 

小さな皮の袋のお守りを渡した。

 

村の掟を破るこことなる

 

自分の顔を描いた布を、このお守りの袋の中に入れて。。。

 

 そのことを何も知らないヨーテは

 

笑顔でこの小さなお守りを受け取った。

 

旅立つ朝、

 

まだ星明かりが幾分まだらに見え隠れするほどの

 

青い闇。

 

ヨーテは

 

日が昇る前に村を出なければならないという決まり事を守り

 

ひっそりと村をでた。

 

数は少なくとも、村の人々皆で温かく祝ってもらった

 

昨晩の旅への送り出しの儀式とは

 

まるで違い

 

すずやかな虫の声しかしない

 

静かな朝だった

 

瞑想用のパイプと火打ち石、もぐさ、ナイフ、乾燥させた鹿の肉、

 

薬草、飲み水を入れた竹の水筒を10本、麻縄のロープ、

 

そして村に伝わる伝統的な絵柄が施された

 

一人用のテントを

 

大きな皮の袋に詰め

 

ルビアにもらったお守りを首にかけ

 

 ヨーテは、西の地区へと旅立った。

 

 西の土地は、上り下りの多い岩山から始まる。

 

空を支配する太陽の光は、

 

旅の1日目から容赦なく照りつけた。

 

竹に入れた水筒を、次々と飲み干してしまい

 

残り3本で

 

一日の終わりを迎えることになった。

 

まだ

 

一日目なのに

 

いつ終わるかも知れぬ

 

はじめての一人旅、そしてこれから迎える、

 

見知らぬ土地での夜。

 

次第に不安が募り始めていた。

 

 

 

日の沈む前には

 

必ず

 

テントを張り

 

一日の終わりの瞑想を行う決まりがあった。

 

ヨーテは

 

テントを組み終えると

 

瞑想の準備に取り掛かった。

 

瞑想は、平らな岩の上でもぐさを焼く。

 

その灰の一部をパイプに詰め

 

大自然に身を捧げることを誓い祈りを捧げる。

 

煙で自分の居場所を大精霊さまに教える役目もある。

 

風向きが変わり

 

ヨーテの顔を煙が深く覆った。

 

煙にむせびながら

 

ヨーテは、心の奥底からくる、たまらない寂しさに襲われて泣いた。

 

たそがれに暮れゆく岩肌を見つめながら

 

昨晩まで、となりに当たり前のようにいたチャンパー

 

父や母の顔を知らないのに

 

岩肌を

 

女性の顔や男性の顔に見立てたりして

 

想像上の

 

父や母を想った。

 

なぜ

 

自分は

 

森に捨てられたのか

 

 

自分は

 

この世に生を受けて

 

ほんとうによかったのか

 

 

一人だけになると

 

今まで抑え込んでいた感情が

 

とめどもなく滝のように流れだした。

 

そして

 

愛する

 

ルビア

 

を想った。

 

 

ルビアへの会いたい思いが

 

感情をさらにゆさぶり

 

涙が溢れるスピードをよりいっそう強くさせた

 

 深い闇が、背後に忍び寄り

 

否応なく

 

夜の世界へヨーテをいざなった。

 

ヨーテは

 

ルビアからもらった

 

お守りを右手で握りしめ

 

涙で熱く濡れた瞳を慰めるかのように

 

強く押し当てた。